免疫細胞はT細胞やB細胞などが存在するけれど、それぞれ全部同じ細胞の集団なの?と疑問に思ったことありませんか?この記事ではこれらの免疫細胞にもそれぞれ個性があり、多様であるということを解説したいと思います。これを読めば、人間のように免疫細胞も一つひとつに特徴があり、もっと詳しく知りたいと思うでしょう!
その免疫細胞たちって全く同じ細胞なの?
そもそも”免疫”がわからない、という方はこちら↓の記事をご覧ください。
【免疫学入門】第1章 免疫(めんえき)って何?
多様性ってなに?
多様性というのは
広範囲に色んな種類があることです。
リンパ球の中でT細胞、B細胞、NK細胞と種類があるだけではなく、
その分類された細胞の中でそれぞれの細胞が違う個性をもっているということです。
この多様性を取り上げたのは
免疫細胞にとって多様性というのは大切な特徴だからです。
これを踏まえて
免疫細胞でいう多様性を解説していきたいと思います。
2種類の免疫細胞の多様性
主に2種類の免疫細胞が大切な多様性を持っています。
それはT細胞とB細胞です。
T細胞やB細胞がわからない、という方はこちらの記事をご覧ください。
【免疫学入門】第4章 細菌感染から守る! B細胞の活躍 編
【免疫学入門】第6章 ウイルス感染から守る! T細胞の活躍 編
T細胞とB細胞は免疫反応の中で
たくさんの種類の病原体を殺すために
この多様性というものが欠かせないのです。
チェックポイント
T細胞とB細胞はそれぞれ1種類の細胞が
1種類の病原体のみ戦うことができる
それぞれの多様性を説明していきます!
T細胞の多様性
T細胞が細胞表面に持っているものといえば、、、
T細胞受容体(TCR:T cell receptor)ですね!
この受容体は抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ 、B細胞)によって
提示された抗原を認識することができるものです。
そして、全てのT細胞が同じTCRをもっているわけではないのです!
なぜかというと、
もし全てのT細胞が同じTCRをもっていたら↓
1種類の病原体しか認識できないとしたら、
恐ろしいですね。
私たちは色んな病気になっているところでした。
実際のところ、それぞれ違うTCRをもっているT細胞がたくさんいます↓
このように、たくさんの種類の病原体を認識するために
TCRの多様性というものがあるのですね!
B細胞の多様性
B細胞が細胞表面にもっているものといえば、、、
IgM抗体(BCR:B細胞抗原認識受容体)ですね!
チェックポイント
IgM抗体とは抗体(抗原にくっつくことができる標識となりうるもの)のうちの1つです。それぞれのB細胞が元々もっている抗体です。
この受容体は抗原を直接認識することができるものです。
IgM抗体で抗原(病原体)を認識した後に、病原体を分解して
抗原提示するというはたらきをします!
そして、T細胞のTCRと同じく
全てのB細胞が同じigM抗体(BCR)をもっているわけではないのです!
なぜかというと、
もし全てのB細胞が同じIgM抗体をもっていたら↓
全てのB細胞が1種類の同じBCR しかもっていなかったら
と仮定した場合と同様に大変なことになってしまいますね。
実際は、B細胞はそれぞれ異なるIgM抗体(BCR)を持っています↓
違うIgM抗体を持つことで多くの種類の病原体に立ち向かうことができるのですね。
それぞれ違うTCRをもったT細胞、違うIgM抗体をもったB細胞は増殖することができ、同じTCRやIgM抗体を持った集団を作ることができます。
よって、様々な病原体に立ち向かうことができ
特異的な細胞を増やして強化することができるわけです。
TCRや抗体が多様性をもつように作られる方法
少し生物学的な話になりますが大丈夫です。
わかりやすく説明していきたいと思います。
T細胞の細胞表面に出ているTCRや
B細胞の細胞表面に出ている抗体(BCR)は
すべて「タンパク質」という物質です。
このタンパク質はDNAの中の遺伝情報が書き込まれている
遺伝子からつくられています。
そして、TCRや抗体の遺伝子の配列(たくさんの遺伝子が並んでいるもの)はそれぞれ共通しています。
TCRの遺伝子配列はこれ!
抗体の遺伝子配列はこれ!
という感じで決まっているのです。
それぞれ共通しているなら違う種類のTCRや抗体はできないのでは?
と思われるかもしれませんが
遺伝子の再構成という仕組みによって違うもの(タンパク質)ができるのです。
最初は同じ遺伝子配列を持っていますが
(遺伝子が並んでいる状態で)2番目の遺伝子はいらないから、
1番目の遺伝子と3番目の遺伝子をくっつけよう!という操作が行われています。
言い換えると、タンパク質(TCRや抗体)が作られる途中で遺伝子というパーツが
除かれたりするものもある中、残ったパーツ組み合わされているのです。
この遺伝子の組み合わせのパターンがたくさんあることにより
TCRや抗体の多様性が作られているということです!
これ以上深掘りすると、
初心者には難しいかもしれないので
今回はここまでの説明にします。
なぜ多様性が大切なのかということもわかりました!
まとめ【多様性をもつ免疫細胞たち】
T細胞とB細胞は多様性があるということを説明しました。
- T細胞はTCRに多様性があるため、多くの種類の提示された抗原を認識することができる
- B細胞はIgM抗体(BCR)に多様性があるため、多くの種類の抗原に直接結合して抗原提示できる
- 1つのT細胞やB細胞はそれぞれが1種類の抗原に特異的であるため、多様な種類の細胞があることで様々な病原体から守っている
そして、このTCRと抗体の多様性はこのように作られるのでしたね。
- 共通してもっている遺伝子の組み合わせパターンを変えることで多様性を作る
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
免疫に関連する本について知りたいという方は
この先も読んでいただけたらと思います。
免疫に関するオススメの本
今回は皆さんも一度は聞いたことある研究者
2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶佑先生
が書かれた本「生命科学の未来 がん免疫治療と獲得免疫」です。
本庶先生はPD-1抗体を用いてがん免疫治療を行う方法を発見したことで受賞しました。
その研究の前に、IgM抗体が別の種類の抗体(IgG抗体など)に変わる仕組みを発見したことでも非常に有名です。
これまでの本庶先生の研究(もちろんPD-1についてもしっかり触れています)と
本庶先生が考えるこれからの生命科学について書かれており
非常に面白いです。
専門用語も出てきて、用語解説も理系の方でないと少し難しいかもしれませんが
一度チャレンジして読んでみるのもアリかもしれません。